人前で緊張して声が震えるのを防ぐには?

結婚式のスピーチや大事なプレゼンの時など、人前で改まった内容について話そうとするとき声が震えてしまう人は少なくありません。話し始めのほうだけ震えが出て、しばらく経つと普通の話し声に戻るという場合はいいのですが、震え声になった自分自身に意識が集中してしまい、その後も声が元に戻らないばかりか手足の先まで震え始め、赤面して汗が噴き出してしまうなど、どんどんつらくなってしまう場合は対処が必要です。人前でスピーチしたりするのは、場数を踏めば大丈夫という意見もありますが、そういったシーンで話し手として人前に立つこと自体が苦痛という人にとっては場数を踏む以前の問題で、あまり無理をしてストレスで体調を崩してしまっては本末転倒です。人前で話すことがますます嫌な場面として脳裏に刻まれ、さらに状態が悪くなってしまうことにもなりかねません。
人前で緊張して話す時にのみ声が震え、友人と和やかに会話している時にはまったく問題がないという場合は、まず緊張しない自分を人前でも保つことができるよう試みます。緊張し始めた時は深呼吸をすると良いと言われます。緊張している状態というのは、自律神経において緊張や活発な活動を司る交感神経のほうが圧倒的優位に立っている状態で、心身をリラックス状態に導いてくれる副交感神経のほうは鳴りをひそめています。深呼吸はその副交感神経を刺激する作用をもたらし、働き始めるよう促すスイッチとなります。副交感神経の作用によって身体の末梢血管が広がることで全身の血流が良くなり、それによって筋肉が弛緩してきます。その緩みが身体にリラックス状態をもたらして、血圧も下がることで気持のほうも落ち着いて来るという流れです。大切なのは無理に心身をリラックスさせようと思わないことで、深呼吸することにのみ意識を向けます。リラックスしなければと力むのは逆効果です。深呼吸も気合いを入れて吸い込むほうから始めると身体が頑張る方向に向いてしまい、交感神経がまたも優位に立ってしまいます。脈拍も早くなることから、緊張状態を招きやすくなり要注意です。息を吐くほうも頑張って息を吐くのでなく、力まないようにしてゆっくりと静かに息を吐いて行くことが大事です。
深呼吸の効用だけでは物足りない場合は、日ごろから本格的に自律神経を整えるという対策を行うことも有効とされます。緊張しやすい状態というのは、すでに自律神経が乱れていることが考えられ、自律神経失調症への対策を行うことで人前での過度な緊張を抑えられるようになる可能性が高まります。ふだん家族や友人と会話している時はまったく問題なく、人前で話すという状態に置かれた時に緊張によって声が震えてしまうと自覚している場合は、性格的なものと決めつけず、自律神経が弱っていないかどうか確認してみる必要があります。自律神経失調症の症状には不眠やめまい、慢性的な倦怠感といった身体的な症状のほか、強い不安や極度の緊張を感じるようになるといった精神的な症状もあります。不安を抱きやすく緊張しやすい人が自律神経失調症に陥りやすいという卵ニワトリ問題のような面もありますが、それほどに自律神経が緊張しやすさに大きく関わっていることになります。ストレスが多く多忙な職場で働いている人は自律神経失調症に罹り易いとされ、思い当たる節がある場合は自律神経を整えることで声の問題も好転できる可能性が高まります。
本格的に自律神経失調症であることを意識した場合は病院で診断してもらって、治療を開始したほうが良い場合もありますが、まずは自力で自律神経を整えたい場合は、規則正しい快適な生活サイクルを整えることから始めます。規則正しい生活にこだわるあまりに無理をしてストレスを溜めてしまっては効果半減ですので、まずは同じ時間に就寝して必要な睡眠時間だけは確保することを心掛けます。あとは栄養バランスの取れた食事を毎日同じ時間に摂ることと、散歩が良いとされますが、睡眠時間の確保が最優先と言えます。
人前で緊張して声が震えてしまうのは病気ではありませんが、声だけでなく緊張すると手足も小刻みに振動してしまうといった場合、本態性振戦と呼ばれる症状である可能性もあります。本態性振戦は原因となる病気が無いのに震えの症状が出ますが、対症療法で使われる薬に交感神経遮断薬であるベータブロッカーというものがあり、交感神経に作用して震えの原因となる神経伝達物質が受容体に届くのをブロックして症状を抑えます。効き目があるぶん強い薬ということで、結婚式のスピーチなど絶対に失敗したくない時期にのみ処方してもらうというケースもあり、声以外の震えも気になっている場合は、一度神経内科を受診して本態性振戦かどうかの確認をしてもらうのも一つの方法です。体調的なものではないと実感していたり、薬に頼りたくない場合は、スピーチなどは断る勇気を持ち、プレゼンも見て読んでわかる資料を多く配布してなるべく話さないで済む方策を練るなど、とにかく無理をせず、自分本位の心が楽になる方法で対策を進めることが大切です。